個人・法人問わず事業をおこなっていれば
通常1年で決算を行い1年間の業績を計算して利益を確定します。
その利益によって税金を計算して納税します。
個人であれば青色申告用の決算書であり法人であれば
財務諸表(決算書)が公式なアウトプット書類になります。
銀行は決算書を分析評価し融資の審査をしています。
とても重要な書類なのですがほとんどの人が何の対策もせず
最終利益の大小・納税金額だけを目的にして決算書を作成しています。
(税理士・会計士に作成依頼している。)
でも銀行目線でいうと最悪の決算書を作成しているということ知っていますか?
つまり融資をしたくない決算書ということです。
では銀行が融資をしたくなるような決算書を作るには
どんなことに注意したらよいのかまとめてみました。
税理士が作成する決算書が銀行に嫌われる理由
個人・法人を問わず記帳代行や税金申告を
税理士や会計士(税理士資格を有する)に
依頼している人が多いのではないでしょうか。
むしろ税務署に申告するためにだけ決算書を
作成しているという人も中にはいると思います。
税務申告の監査がいわゆる税務調査です。
ほとんどの個人・法人はこの調査で否認(問題)
されないように会計処理をして決算書作成しています。
同時になるべく利益が出ないよう節税を意識します。
税金がなるべく少なくなる=利益が減る方法を
税理士・会計士に期待しています。
もちろん税金の専門家である税理士はそこが売りですから
期待に応えるわけですが、実はそこがネックになります。
みんなで節税忖度をします。
赤字にならず、ほどよく利益が出てほどよく納税のラインです。
でも銀行が好む決算はたくさん利益を出して
税金を払い税引後の利益を自己資金として
積立ていくような決算書です。
税理士が好んで作成する決算書とは正反対になります。
なぜか創業期からものすごく税金を意識して
利益を押さえたがる傾向がありますが
むしろここは利益を出し税金を払ってでも
自己資本を増やしていくべきだと思います。
その積み重ねがのちのち大きく効いてきます。
将来銀行のプロパー融資を受け融資を増額して
一気に成長曲線にのることが期待できます。
もちろん創業期から数千万・億単位の利益が
出るのであれ節税を意識する必要があります。
数十~数百万程度の利益で節税対策を
意識するより税金を支払って自己資本を
充実させる方が大きくメリットがあります。
また税理士は最終利益により税金を
計算するのであまり処理科目について
意識することがありません。
特にクライアントから指示がなければ
販売管理費科目で処理することが多くなります。
結果として営業利益を圧縮することになります。
銀行が決算書の中で一番注目するのが営業利益です。
販売管理費の中で営業外費用や特別損失で
処理できる支出があるのなら販売管理費から
外すことによって営業利益は良くなります。
もちろん最終利益は変わりません。
私も会計事務所に勤務していましたが、どこか利益を
あまり出してはいけないという雰囲気がありました。
税理士は節税のスペシャリストである以上
税金が多いのは力量不足と見られようです。
(クライアントの強いニーズでもあります。)
だから黙っていると節税対策決算書を作成されてしまいます。
銀行は決算書のここを見ている
銀行がまず確認するのが以下の2点です。
- 貸借対照表の自己資本
- 損益計算書の営業利益
です。
創業融資の場合は自己資金として
手元現金と予想営業利益ということになります。
貸借対照表の自己資本
まず債務超過ではないか、返済原資となる利益は
あるのかというところを確認します。
次に細部を確認しますが
重点的に見るのが貸借対照表です。
資金がどのように運用されているのか
返済ができなくなったら回収できる
資産や資本がどの程度あるのかを押さえます。
損益計算書の営業利益
そして損益計算所の利益が多いのか少ないのか
効率的に利益を出せているのか
無駄な経費がないかなど収益性を確認します。
基本的には営業利益は黒字でなければいけません。
赤字の場合は一時的な赤字か
来期以降黒字化の目途があるのか
減価償却は適正に計上されているかなどが
主にチエックされます。
販売管理費は金額が大きいものから
チエックされますので内容を
確認しておきましょう。
貸借対照表の内容
貸借対照表から銀行がどんなことを
読み取っているか見てみましょう。
- 運転資金
運転資金=売掛金+受取手形+棚卸資産-支払手形+買掛金(未払金)
ここで算出した金額が必要となる資金額になります。
- 現預金
平均月商の何か月分あるか見られます。
最低1カ月分以上は必要です。
- 売掛金
回収不能な売掛金がないか見られます。
- 棚卸資産
在庫量は適正化・不良在庫はないか
利益を増やすための架空計上はないか。
- 買掛金
支払いサイトが適正化か、延滞先がないか見られます。
銀行が注意する科目
銀行だけでなく税務調査でもチエックされる科目です。
逆に経営者が一番放置してしまう科目です。
この科目を使わにないのがベストですが使用しているのであれば
内容を確認して説明できるようにしてください。
- 仮払金
経営者個人や非事業性の支出はないか
回収のめどはあるのか・資金が固定化していないか
などが見られます。
- 貸付金
経営者の個人的な貸付はないか
貸付先の債権が不良化していないかなどを
確認します。
- 投 資
銀行は借入金で投資することを非常に嫌がります。
これから融資を依頼する場合などは事前に
しっかり確認しておきましょう。
銀行が融資したくなる決算書のポイント
銀行は中小零細企業や個人事業主の決算書に記載された数値を
信用していません。常に疑い目を持って監査していることを理解してください。
各科目の注意点は述べましたので銀行が融資したくなる決算書について述べます。
本業の利益(営業利益)→損益計算書から読み取る
営業利益が黒字化どうか。
営業利益を出すために仕入や販売管理費の調整がされていないか
債務超過の有無→貸借対照表から読み取る
不良債権や・不良在庫がないか簿外債務はないかなど
実質的な数値を算出して判断します。
資金繰り→貸借対照表・キャッシュフロー計算書・資金繰り表から読み取る
必要運手運資金と現預金額などから判断します。
資金繰り表は決算書ではありませんが、銀行が重視している書類なので
ぜひ作成してください。
返済原資→損益計算書・貸借対照表から読み取る
税引前利益+原価償却の金額>返済元金になっているか。
換金性のある資産を持っているか。
成長利益→損益計算書から読み取る
売上・粗利益・営業利益など成長しているか
下記5つのポイントをクリアしていることが
銀行が融資したくなる決算書の条件になります。
決算書が条件を満たすように月次管理をしっかりしてください。
月次単位で決算書数値を改善していくことが重要です。
- 本業の利益(営業利益が黒字)
- 債務超過の有無
- 現預金不足の有無(月商1ヵ月以上は欲しいです。)
- 返済原資(税引前利益+原価償却の金額>返済元金)
- 成長利益(売上・粗利益・営業利益)
まとめ
決算において節税を重視しすぎると
事業の本当の姿が見えなくなるので注意してください。
常に節税を意識して利益を調整してばかりいると
本当の利益、どれだけ儲かっているかわからなくなります。
多くの中小零細企業・個人事業主は税理士・会計士への会計経理の
依存度が高くすべて任せているという人がほとんどです。
決算の説明を受けていると思いますが難しくて
よくわからないというのが本音のようです。
あなた自身がわからない決算書を銀行に
見せても全く説得力はありません。
融資をしてもらえるかどうか不安に感じている
経営者が多いのですが、実は決算書の数値を分析していれば
事前に融資の可否はある程度わかります。
残念なことに気が付かないのは
経営者であるあなただけかもしれません。
決算書は提出すればよいのではなく、提出する前に銀行に融資してもらえるような
決算数値をいかに日々頑張って経営者が作れるかにかかっています。
今回紹介したポイントを理解して銀行が
融資したくなるような決算書をぜひ作ってください。