商品別の正しい価格設定を行うにはプライシングについて学ぶ必要があります。
プライシングとは、製品やサービスの価格を設定することです。
経営の神様とも呼ばれる京セラの名誉会長 稲盛和夫氏が「値決めは経営」「経営の死命を制するのは値決め」であると言うほどにプライシングが重要なものです。
値付け(プライシング)の目的は
- 売上の最大化
- 目標利益率の達成
- 価格の安定化
- 市場シェアの維持・拡大
- 競合への対応
といった目的があります。
競合への対応
具体的なプライシングの方法
プライシングの方法にはいくつか種類があります。
- コスト志向型プライシング
- 需要志向型プライシング
- 競合志向型プライシング
コスト志向型プライシング
コスト志向型のプライシングコストに一定の利幅を加えることにより価格とする方法です。
OEMであれば、製造原価に一定率の利幅(マージン)を加えて価格とする、「マージン率によるコストプラス法」が主流です。
欧米輸入であれば、仕入原価に一定率の利幅(マークアップ)を加える「マークアップ率によるコストプラス法」が使われます。
経営努力をしないままコストベースのプライシングを行うと消費者のニーズからかけ離れた価格で商品やサービスを販売することになりプライシングの目的の一つである売上の最大化を行うことが出来ません。
この部分は売上を重視するか利益率を重視するかで変わってきますが利益率が15%以上確保できているのであれば売上の最大化を目指し事業規模を拡大していく方が事業が安定しやすいです。
シェアの安定やブランド知名度の向上、融資の際の銀行の評価の向上などにつながりやすいためです。
概算で仕入額の3倍で売る、5倍で売る、10倍で売るという価格設定の方法はまさにコスト志向型のプライシングになります。
OEM・欧米輸入であればどちらも3~5倍、ジュエリーやコスメなどの特殊な商材では10倍辺りが目標値ですが商品ブランドの認知度が低い状態では高く売ることが難しいのでコスト志向型のプライシングはすでにある程度認知度がある商品を仕入る時に適しています。
需要志向型プライシング
需要志向型プライシング
以下は船井総研で使われている需要ベースの値付け設定の方法です。
| 顧客予算(円) | 最低購入価格(円) | 最高購入価格(円) |
| 100000 | 80000 | 180000 |
| 50000 | 40000 | 80000 |
| 30000 | 27000 | 40000 |
| 20000 | 18000 | 27000 |
| 10000 | 12000 | 18000 |
| 8000 | 12000 | |
| 5000 | 6000 | 8000 |
| 4000 | 6000 | |
| 3000 | 2700 | 4000 |
| 2000 | 1800 | 2700 |
| 1000 | 1200 | 1800 |
| 800 | 1200 |
3000円の予算で商品を探している人は2700円~4000円の商品の中から商品を買うということになります。
1000円、5000円、10000円予算の時だけ2つのグループに分かれ価格が与える印象が変わり消費者が何を求めているかで変わってきます。
ただしAmazonでは常に価格が動いています。その瞬間に最適な値に設定できたとしても次の日にもそれが最適であるかどうかは分かりません。
競合志向型プライシング
需要志向型プライシングは競合の価格を参考に値付けをする方法です。ライバルが6000円だから自社は5500円、ライバルが4000円だから自社は3800円と価格競争に陥ると経営は苦しくなるので注意が必要です。
そのためには先程の需要志向型プライシングを組み合わせる必要があります。需要志向型プライシングは顧客目線での価格付けの話で最終的に競合と比較した上での優位性がある価格づけをしないといけません。
そのため上記の数理マーケティングを参考に真に競合となる商品を見抜きその商品ページに合わせて競合指向型の価格改定を行うことを推奨しています。
相乗り出品ではなく新規出品を行なった場合原価ベースで価格を決めその後セールなどで多少価格を変えることはあっても価格改定自体は行っていない企業がほとんどですが常に価格を変えるダイナミックプライシングがおすすめです。
価格は頻繁に変えすぎると消費者の信用を失う可能性もありますがダイナミックプライシングで基準にする競合商品が頻繁に価格を動かさない限りその心配はありません。
ダイナミックプライシングを行なっているのはごくわずかな企業である為基本的には問題ありませんが万が一こちらの価格を参考にしていた場合は常に価格が動くことになってしまうので気をつけましょう。
競合価格を考える際に重要になってくるのがシェア率の概念です。
シェア率
中国輸入を中心としたOEM生産の方法で解説したランチェスター戦略に基づくと競合が1社の場合は2店間のマーケットシェア率が√8≒3以上離れると逆転が不可能と言われています。
これは1対1の戦いの場合で複合戦では
√√8:√√1 ≒ 1.7:1
になるのでシェアが競合店の1.7倍離れてしまうとシェアが下の店が上の店に勝つのが難しくなるとされています。
独占シェア 74%
相対シェア 42%
トップシェア 26%
優位シェア 15%
というランチェスター戦略に重要な数値も数学的に導き出すことが可能ですが長くなるため説明は省きます。
シェア率は小カテゴリ内での上位の商品ページの売上の合計を分母にライバル企業、あるいは自社企業のブランドの売上合計を分子にすれば求めることが可能です。
ただし自社の販売商品が2000円で競合他社の販売価格が10000円だとすると先程の需要ベースの価格設定方から見ても競合の設定が間違っており何も意味がない分析をしてしまっていることになります。
あくまで同価格帯のブランドを競合としてシェア率を調べる必要があります。
その上で独占シェアを取っている企業がいる分野には参戦しないようにします。特許などの特別な価値筋がある場合は別ですが機能を一つ加えたくらいでは難しいです。ランチェスター戦略ではシェアが高い方はシェアが低い方の真似をすればいいだけだからです。
InstagramがSnapchatやTiktokの機能を取り入れさらに業績を伸ばしたのもシェアが高い企業がシェアが低い方の企業を真似するという理にかなった手法を使ったことになります。
プライシングとブランディング
近年は商品のコモディティ化が進んでいます。
コモディティ化とは市場参入時に、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になることです。
コモディティは、元々は「日用品」や「必需品」などの食べ物やエネルギーなど、いわゆる「商品」を指す言葉であり、ビジネス用語では「一般化」の意味でも使われています。
マーケットインの考え方が主流のAmazon市場においてはとくに類似の商品が多くなっており中国で生産が可能な商品に関しては特に顕著です。
そこでコモディティ化した、消費者から見ればどちらでも同じように見える商品であればプライシング戦略を持つだけでも優位に立つことが可能ですが実はそれほど単純な話ではありません。
ライバルが5800円、シェア率は12%なので参入の余地あり。顧客の需要ベースの価格設定では5800円は5000円予算の価格に当てはまり4000~6000円のゾーンに属している。
このような時にあなたならいくらの価格を付けますか?
同じような商品は価格差が1.3倍以上になった時に圧倒的にお得に見えるという心理効果が働くので仮にシェアを一気に奪いたいのであれば同じ商品を
5800÷1.3=4461円
で販売すればいいことになりますが利益率も考慮しなくてはいけません。
通常5800円で販売されている商品であれば仕入れ原価は1500~2500円程度でしょう。
仮に1500円であればコスト志向型プライシングの仕入れ原価の3倍で売るという条件もクリア出来ていることになります。
しかし仕入れ原価が2500円かかる商品であれば4500円程度で販売してしまうとAmazonのカテゴリー手数料やFBA手数料、そして販促のための広告費を考えるとかなり厳しいです。
Amazonのカテゴリー手数料とFBA手数料で概算で15%とし、広告費は新規商品販売時は売上の20~30%を想定します。
利益 :4500円-4500×15%-2500-4500×25%=700円
利益率: 700÷4500×100=15.6%
です。欧米輸入であれば問題ない数字ですがOEMと考えるとキャッシュフロー が悪くなりやすいので利益率としてもイマイチです。
そうなると4461円という値付けは出来なくなってしまいます。
実際の現場ではこのように3つのプライシング方法を組み合わせて行うことになります。
ここで鍵となるのがブランディングです。
ブランディング
ダートマス大学のビジネススクールの教授ケビン・レーン・ケラーによれば、「ブランディングは精神的な構造を創り出すこと、消費者が意思決定を単純化できるように、製品・サービスについての知識を整理することと言われています。
見た目が同じでもブランドタグがついているだけで片方は2倍近い価格で売れることはよくあることです。
まず以下の公式を見てください。

全く同じ価格、同じデザインのブランド品とノーブランド品があればブランド品の方が高く売れます。
全く同じブランド、同じデザインで高い商品と安い商品があれば安い方が売れます。
しかし実際には全く同じ価格、同じデザインの商品はありませんし同じブランド、同じデザインで値段が異なる商品も存在しません。
また価格下げを行うと一時的にブランド価値が上がりますがブランド力はそれに引きづられて下がるため結局ブランド価値自体も下がってしまうことが多いので気を付けましょう。この辺りは需要ベースの価格付けでターゲットが変わってきてしまうことも影響しています。
そのため類似している競合商品が存在しているとしても安易に値下げをせずブランド力を上げていくことが重要になってきます。
ブランドの価値を上げるものとして以下のようなものがあります。
- 価格
- 素材
- 機能
- 商品デザイン
- HP・LPのデザイン
- 社会的証明
- 権威性
- 口コミ
- カスタマーサービス
- 体験・アフターケア
- キャッチコピー
- ストーリー
- 情報発信力
素材・機能・商品デザインに関しては売れるパッケージや商品のデザイン方法で扱っています。
HP・LPのデザインに関しては売れるデザインと心理学的アプローチで扱っています。
社会的証明や権威性、口コミ、カスタマーサービスに関してはAmazon内集客の方法で扱っています。
体験・アフターケアに関してはリストマーケティングの方法で扱っています。
キャッチコピーやストーリーに関しては売れるキャッチコピーの作り方で扱っています。
情報発信力に関してはAmazon外集客(SEO編)やAmazon外集客(SNS編)で扱っています。
これだけ様々な記事が関係するほどブランディングの方法は重要かつ複雑となっています。
ブランド力を定量的に評価することは難しいですが最終的に他社より高くても売れる状態を作り出しましょう。もちろん値段の高さには限界があります。消費者の財布事情として需要ベースの価格設定を意識することも重要ですし1.3倍以上価格が離れた際に値段の差を意識しやすくなるという心理効果も重要です。
新規性が高いものであればブルーオーシャン市場を作り出し相場より何倍も高い価格で売ることも可能ですがデザインや機能などは真似しやすい部分であるためやはり最終的にブランド価値を作っていくものとしては
- 体験・アフターケア
- ストーリー
- 情報発信力
で差が出てきますが
このレベルで勝負するのは有名ブランドの話であって一般的にはそれ以外の比較的真似をしやすい部分を改善していくだけでも十分売上を伸ばすことは可能です。
売上の最大化
特定の商品の売上を最大にするためには値付けは欠かせませんがそもそもどの価格帯に参入すれば売上が最大になるかというのも公式があります。
購入される商品の価格というのは正規分布になっており
売上が最大化する価格=√市場の最大価格×√市場の最低価格
となります。
市場の最大価格が40000円、市場の最低価格が10000円だとすると一番売れるのは
√40000×√10000=20000
で20000円になります。
自社ECの場合はショップにある商品は全て自分で決めることが出来るため平均顧客単価をコントロールすることが可能ですがAmazonなどのECモールの場合は一番売れやすい価格帯が自動的に決まってきます。
しかしこれはあくまで理論的な話であり実際には売上が最大化するゾーンに強大なライバルがいる可能性もあるので3Cや4Pなどの基本的マーケティングと合わせて参考程度に使いましょう。
自社ECで平均顧客単価を上げたければ全商品の値段を高くするのではなく上限を上げればいいことになります。
平均顧客単価を5000円になるようにしたければ上限価格は、2倍下限価格は、1/2にすれば自然と5000円に収束することになります。
商品別の正しい価格設定・値付けの方法まとめ
商品別の正しい価格設定・値付けをして
- 売上の最大化
- 目標利益率の達成
- 価格の安定化
- 市場シェアの維持
- 拡大競合への対応
を目指してください。


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